日野自動車のエンジン不正による影響

日野ブルーリボンハイブリッド(大型路線バス)
いすゞエルガをベースに、日野製のパワートレインを
搭載している。
日本のトラック・バスメーカーである日野自動車。「ヒノノニトン(デュトロ)」のCMで馴染みがあると思います。

そんな日野自動車ですが、同社製の国内向けディーゼルエンジンの認証試験において排出ガスや燃費のデータを改ざんするなどの不正行為が発覚し、同社製ディーゼルエンジンを搭載する国内向けトラック・バス全車種の出荷を停止。また、この問題は産業用エンジン(重機など)にも及んでいます。

また、今回の不正を受け、商用車の電動化や環境技術、その他先進技術の企画を行うCommercial Japan Partnership Technologies(CJPT)から日野自動車が除名されました。

発覚の発端は2018年のアメリカ向けエンジン

北米で売られている日野Lシリーズ(中型ボンネットトラック)
現在はカミンズ製B6.7エンジンに変更して対応している。

2018年11月に日野自動車の社員がアメリカ向けエンジンの排ガス認証における同社のやり方に疑問を持ったことが始まりで、その後の調査で課題が見つかりました。

そのため、2021年4月より国内向けでも社内調査が行われ、不正が発覚しました。

排ガス認証において課題が見つかったことにより、北米向けトラックについてはカミンズ製エンジンに切り替えて対応しています。また、日野自動車の不正により、アメリカの運送会社など4社が日野自動車や親会社のトヨタ自動車に損害賠償請求する訴訟問題にまで発展しています。

出荷停止した車種(トラック)

これは2022年8月27日時点の情報です。現在、一部車種は出荷を再開しています。

デュトロ(2t積以上)、レンジャー、プロフィアが該当します。

なお、トヨタ製エンジンを搭載するデュトロ/ダイナ(1t積系)と電気トラックのデュトロZ EVは販売継続しています。
国産メーカーの国内向けトラック現行車種(括弧内は他社へのOEM車)
出荷停止車が含まれる車種を太字で記載

出荷停止した車種(バス)
これは2022年8月27日時点の情報です。現在、一部車種は出荷を再開しています。
一般バスはコースター/リエッセII、メルファ/ガーラミオ、セレガ/ガーラが該当、路線バスはポンチョ、エルガ/ブルーリボン(ハイブリッド車)、エルガデュオ/ブルーリボンハイブリッド連接バスが該当します。
なお、いすゞ製エンジンを搭載するレインボーやブルーリボン(ディーゼル車)は販売継続しています。
国産メーカーのバスは、製造メーカーが少ない上にバリエーションが非常に偏っており、中型観光バスや小型路線バス、連節路線バスは国産メーカーから購入できなくなりました。よって、これらの種類のバスを新車で導入する場合は海外メーカーから購入するしかありません。
コースター/リエッセIIは、ハイエースやランドクルーザープラドなどと同じトヨタ製1GDエンジン(2754cc、直列4気筒)に切り替えた上で販売再開すると思われますが、新たな課題が見つかっており、現在も出荷停止が続いています。ちなみに、台湾やオーストラリアでは、以前から1GDエンジンに変更されています。
国産メーカーの国内向け一般バス(括弧内は他社へのOEM車)
出荷停止車が含まれる車種を太字で記載
国産メーカーの国内向け路線バス(括弧内は他社へのOEM車)
出荷停止車が含まれる車種を太字で記載

最後に
トラックやバスは人々の日常生活に欠かせないものであり、日野自動車の不正は業界に大きな影響をもたらしています。また、ほとんどの車種の出荷停止や信頼の失墜により、日野自動車は存続の危機に瀕しています。コンプライアンスとかけ離れた行為による代償は大きいだろう。日野自動車や関連メーカーの今後の対応に注目したいところです。