一般的なハイブリッド車は日本勢が根強い一方で、プラグインハイブリッド車(PHEV)は欧州勢が根強いです。プラグインハイブリッド車は、「プラグイン」の名の通り電気自動車同様にプラグでの充電が可能であり、バッテリー残量が十分にあれば、ある程度の距離はモーターだけでも十分に走ることができます。
プラグインハイブリッド車はスポーツカーも無縁ではなく、イタリアを代表する高級スポーツカーメーカーであるフェラーリも、2019年に初の市販車となるSF90ストラダーレ(SF90 Stradale)を発売しました。
選べる走行モード
SF90ストラダーレは、ハンドルにあるスイッチから4つの走行モードを選択できます。上から順に
クオリファイ:エンジン+モーターの性能を最大限に発揮する。
パフォーマンス:エンジンは常時稼働し、バッテリーを充電しながらエンジン出力を優先。
ハイブリッド(H):通常のハイブリッド走行モードで、効率重視。
eドライブ(eD):モーターのみで走行。エンジンは常に停止しているため、住宅地でも近隣住民を驚かすことなく静かに走行可能。
なお、eドライブは、バッテリー残量が十分にある時のみ使用でき、少なくなった際は自動的にハイブリッドモードに切り替わります。EV航続距離は約25kmです。
パワートレイン
SF90ストラダーレが搭載するハイブリッドシステムは、後輪側にエンジンとモーター、前輪側に2台のモーターがあるトルクベクタリング式4WDとなっています。
エンジンは、最大出力780PS、最大トルク800Nmを、3台のモーター合計で最大220PS(162kW)を発し、システム最大出力1000PSを実現しています。
トランスミッションは8速DCTです。
エンジン
F154 FA(3990cc、V型8気筒)にツインターボを組み合わせています。ハイブリッドになっても、フェラーリのあの独特なサウンドは変わりません。
前輪駆動用モーター
前輪駆動用モーターはマレリ製で、2台のモーターは左右独立しています。そのため、曲がる時はモーター回転数に差が生じ、聞こえてくるモーター音は不協和音のような響きになります。また、左右独立したモーターがトルクベクタリング(左右のタイヤで異なる量のトルクを与える)を行うことで、高いコーナリング性能を持たせています。
EV走行時やバック時は専ら前輪駆動用モーターがタイヤの駆動を担っています。そのため、バックギアが不要となり、トランスミッションの軽量化にも寄与しています。
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ボンネットを開けるとトランクがあるが、その奥には 前輪駆動用インバータが見える。こちらも マレリ製。 |
後輪駆動用モーター
後輪駆動用モーターはYASA製で、世界トップクラスの出力密度(14kW/kg)を誇ります。長さはたったの72mmで非常に薄型であるため、「パンケーキ」とも呼ばれています。
エンジンと直結しており、モーターとしても発電機としても使われます。また、エンジンスターターとしても機能するので、「キュルキュル言わないよ。」
なお、モーターとエンジンと切り離すためのクラッチはないため、エンジンを駆動回路から遮断すべきであるEV走行時は稼働しません。
バッテリー
バッテリーパックは84個のリチウムイオン電池セルが使用され、重量は84kg、電圧は350Vです。